【第8回】ものづくり補助金の採択されるためには

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【第8回】ものづくり補助金の採択されるためには


第8回ではものづくり補助金の採択に求められることをご説明します。

 


●どういった内容なら採択を狙えるの?

この集中連載も第8回になりましたが、補助金申請をご検討されている方にとって、もっとも興味深いのがこのテーマではないかと思います。

我々のようなコンサルにとって、どんな内容を申請書に書くかは、いろんなノウハウがあるかと思いますが、その中で間違いなく言えることは、審査要領に対応したことをちゃんと書いているか、ということです。

一見、当たり前のように思えるかもしれませんが、これがなかなか皆さんできません。

では実際に審査要領の中でどのような点が見られていくかを確認しながら説明していきたいと思います。

 


●審査項目①新製品・新サービスの革新的な開発となっているか?

ものづくり補助金の中で、もっとも重要なポイントといっても過言ではないかもしれません。

ものづくり補助金では常に申請内容で「革新性」というキーワードが求められてきました。

「えっ?新商品開発じゃないとダメなの?」というとそういうわけではありません。

ここでいう新製品・新サービスとはあくまで経営革新的な一面を言っていると解釈してよさそうです。

この経営革新とはいわゆるイノベーションに近いイメージです。具体的には製造業なら「新商品」「新生産方式」、サービス業なら「新サービス」「新たなサービスの提供方法」といったことが対象になります。

但し、過去の採択案件の計画名・概要を見る限り、必ずしもこれらの「新」が含まれていなくても十分生産性向上に寄与するなどの内容であれば採択されているものも結構あるようです。

極端な話、既存商品の生産に最新設備を導入する場合においても、何かしら新機能がついていたりするので、それで更に生産性が向上するのであれば、広義で「新生産方式」と言えなくもありません。ですので、あまりこれが無ければ申請できない、とまで深刻に悩む必要はなさそうです。

 


●審査項目②課題の解決方法が妥当で優位性が見込まれるか?

ここで結構スルーされがちなのが「課題の解決」のところです。

多くの事業者様は、「あれ欲しいから買いたい」といった動機から新設備等を導入されると思いますが、これだけでは補助金申請では非常に弱いです。欲しいからには「なぜ欲しいのか?」の理由が必ずあるわけで、それを明確に記載する必要があります。特にここでは「優位性」ともありますので、「どのようにどれくらい優位になるのか?」の観点も含めて記載する必要がありそうです。

ではここでの「優位」とはどれくらいの「優位」なのかにも少し触れておきます。

もちろん日本一・世界一なら申し分ないですが、なかなかそこまで優位性をもつのは難しいですので、これは私自身の感覚ですが、道内とか道央とかで1位・2位くらいの「優位性」があれば勝負になると思います。

また、生産性改善による製造原価削減の場合は、5%や10%改善するというレベルではなく、数十%改善する、といったくらいの生産性改善でないと説得力は薄いですね。

 


●審査項目③人・モノ・カネ・技術は揃っているか?

ここも結構見落とされがちです。当たり前すぎて書かないということもあるのかと思いますが、大抵の場合、審査員は対象企業のことを知らない状態で審査するわけですから、具体的に示してあげることが必要不可欠です。

例えば新技術を導入する場合、その技術が誰が扱うのか、なぜ扱えるのかなどを説明してあげる必要があります。「最新機械を導入すれば万事うまくいく」というのでは幾分軽率な投資とも捉えられかねません。

また、財務状況によっては、必要な資金をどうように調達するのかといった説明も必要かと思います。

特に赤字決算等があった場合には、なんらかの事情によるものであったのであれば、具体的に説明しなければ企業としての信頼も低下してしまいます。

それ以外に自社の強みなどを説明する上で、「こんな得意な職人がいて、こんな優れた設備も導入していて‥」といったことも明記してあげた方が、良いと思います。

 


●審査項目④市場ニーズ・市場規模は明確か?

ここもスルーされがちですね。市場ニーズについては、取引先等のコメントなどを記載する場合もあるかと思いますが、そのようなミクロな視点に留まらず、日本国内あるいは世界的なニーズ・動向にも触れておく必要があります。国の統計データなどを上手く活用して、ちゃんと説明しましょう。

また、市場規模も重要です。ものづくり補助金事業ではニッチ産業の割合も多いですが、このようなニッチ産業で売上を拡大するだけの十分な市場規模があるかどうかというのは極めて重要です。

ここをどのように算出するかは悩ましいところですが、直接的なデータがない場合は、仮設をたてて「これくらいと考えられる」ということでも説得力さえあれば十分に通用すると思います。

 


●審査項目⑤費用対効果が高いか?

付加価値額の年率3%以上アップといった申請要件があったかと思いますが、当然に費用対効果が優れていることも求められます。

但し、その文言とは裏腹に注意が必要です。売上予測の数字は「言ったもん勝ち」ですから、書こうと思えば何とでも書くことが出来ます。

むしろ「本当にそんなに売れるのか?儲かるのか?」と審査員が疑問を抱かれないかを懸念すべきです。

例えば1000万円の投資回収が3か月、といった事業計画をみたら「見通しが甘すぎるのではないか?」という見方をまずします。そしてそれは90%以上確率で的中します。

儲からない事業計画も困りものですが、儲かりすぎの事業計画にはもっと注意してください。

 

以上5点を抑えれば、十分に勝負可能な申請書が作れるのではないかと思います。

とはいえ、なかなか全て作っていくのは大変ですよね。我々のようなプロコンでもなかなか大変なわけですから、かなりこなれた人でなければやはり数十時間はかかってしまうものと思います。

 

※上記内容は令和2年8月現在の内容に基づいており、最新の情報についてはものづくり補助金のオフィシャルサイトにてご確認下さい。